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斉藤丈夫新理事長インタビュー

三和病院オープンまで4ヶ月。
文字通り、三和病院建設の立役者として、全スタッフを牽引してきた
斉藤先生。常に柔和な笑顔を絶やさず、権威を求めることなく、
患者さん第一の姿勢で、幾多の困難を乗り越えてこられた。
新病院でも、たくさんの患者さんの願いを受け止めて、
地域の赤ひげ先生として活躍を期待されています。
斉藤先生に、現在の心境を、語っていただきました。

                       (2014年4月現在)


——平成26年8月の開院を目指して、三和病院は目下急ピッチで建設中です。今の心境をお聞かせください。


斉藤 正直、よくここまで来られたというのが実感です。長い道のりでした。三和病院の母体、八柱三和クリニックのホームページの機関誌『かなえ』でも、これまでの経緯など随時、書いてきましたが、私たちは一度ならず二度の挫折を味わいました。私自身は、新八柱台病院に15年勤め、医師としての本分を全うする診療を実践できていたと思っていました。それが、経営者側のまさかの脱税問題で経営が窮地に立たされ、病院を離れることになりました。
 志を同じくする医師やスタッフたちと、新松戸にある有志たちの元で、病院再興を目指しましたが、途中で彼らは戦線を離れたため、再度、ゼロからやり直しをしなければなりませんでした。
 新八柱台病院からずっと私たちを信じ、新松戸まで通って下さった患者さんたちの思いを忘れたことはありません。病院建設を前提に、新たに仲間を得、私たちの理想に共鳴してくれる人材を得て、病院の母体となる八柱三和クリニックを開院できたのが、平成22年2月でした。
 クリニックオープンに当たって、たくさんの患者さんたちから、「立派な病院が出来て良かったですね」と仰っていただきました。そのたびに、「でも、病床がないので、ここはまだ病院ではないんですよ」とお答えしながら、早い段階で入院設備の整った病院を必ず再興しなければと思い続けてきました。
 クリニックでの診療に全力を注ぎながら、同時に病院建設という目標に着手し、50床の認可を取るため、患者さんたちがたった3ヶ月間で2万名を超える署名を集めて下さり、その大きな後押しが力となり、今年夏の開業にこぎ着けた次第です。
 怒濤のこの数年間を経て、私は50歳を迎え、他の医師たちもそう若くはない年齢ですが、困難を乗り越えるたびに強まった絆を核にして、私たちを支えてくれた患者さんへの恩返しと責任を果たすべく、そしてたくさんの期待に応えられるよう、立派な病院を創りたいと覚悟を決めています。


——理事長として、どのような病院を目指していきますか?


斉藤 三和病院はベッド数50床、規模としては大きくありませんが、大病院に負けないチームワークの良さで、地域の方々から信頼され安心感を持って受け入れていただける病院を目指します。チームワークは八柱三和クリニックで培ってきたものですが、それをさらにパワーアップさせていきます。 
 クリニックはオープン当初からフルスピードで走りだし、さまざまな危機に対面してきましたが、そのたびにスタッフ一人ひとりが懸命に考え、知恵を出し合い、乗り切ってきました。クリニックの責任者として、患者さんに頭を下げるような事態は幸運にも一度もありませんでした。
 新病院では、13の診療科目があります。内科では、一般内科のほか、糖尿病内科、内視鏡内科、消化器内科があり、外科は、乳腺外科、消化器外科、整形外科、形成外科、そのほかにリウマチ科、アレルギー科、皮膚科、放射線科がありますが、これらすべてが連動して機能するように持っていきたい。
 高齢になると複数の疾病を持つことが多くなります。大半は特別な専門医を必要としないありふれた疾病ですが、大きな病院になると疾病ごとそれぞれ専門の科にかからなければならず、患者さんの負担は増えるばかりです。専門に特化した複数の医師よりも、患者さん全体を診て責任を持てる一人の主治医の存在が大切な場合が少なくありません。
 三和病院では患者さん一人ひとりに主治医がいて、患者さんの病気、健康、生活を考えてもらえるという安心感を持っていただけるようにしていきたい。それは、単に私だけの思いではなく、他の医師や看護師などスタッフ全員が意志統一していることです。
 そうした私たちの三和病院建設の意義を、患者さんたちがいちばんわかってくださっている。だから50床の認可を得るために、患者さん方が苦労して短期間で署名を2万名以上も集めて下さった。その患者さんたちの願いが行政を動かしてくれました。私たちには重い責任があると決意を新たにしています。


──斉藤先生は同時に内科の責任者でもあります。どのような診療を目指しますか?


斉藤 八柱三和クリニックの内科外来のモットーは、「診療で説明した内容は文書で手渡して、患者さんの手元に残るようにする」でしたが、これを三和病院でも踏襲していきます。私自身の本音を言えば、患者さんに詳しい説明で時間を割くよりも、正しい診断、的確な処方の方がより重要だと思っていますが、患者さんサイドでは、医師のちょっとした話でも、自分の体のことですから、納得した説明を聞きたい、そして話を聞くだけでなく文書で手渡ししてもらいたい。でも、心ではそう思っていても「その説明を紙に書いてください」とは頼みにくいし、医師の側でも頼まれても難しいことです。言葉を文章化するには、時間がかかりますし、外来で使える時間も限られていますから。
 でも、15年前から私はそういうことを考えていましたので、当初はどれくらいできるかわかりませんでしたが、『千里の道は一歩から』の気持ちで、文書の作成に取り組み、15年をかけて3000項目、1万ページに及ぶリーフレットシステムを作りあげてきました。



LeafretSystem



3000項目、1万ページに及ぶリーフレットシステム。
症状に合わせ、解りやすく組み合わせて説明する
Sanwa Hospital / Takeo Saito ©


 

 これは、ほかの病院には絶対にない、これからの三和病院の内科診療の一つの強みとして生かしていきたいシステムです。
 具体的には、外来の始まる前に患者さんのカルテを見て、どういうものがあればいいか選んで準備しておきます。この準備があるかないかで、説明の手順やスピードが違ってきますし、何より患者さんの自分の疾病に対する認識度が違ってきます。
 そしてここで内科医として大きな差が出ると私は思っているんです。つまり、診断とか治療とか診察する手順や時間など、内科医によってそう違わない。
 ですから差が出せるのは、こうしたリーフレットで患者さんによりわかりやすく説明して理解してもらう技術ではないでしょうか。今は電子カルテですから、見せたいものを10秒以内にパッと画面に出せて、帰りにはプリントして渡してあげられます。きちんとした説明を求める患者さんは、文書で読みたいと思っていますから、例外なく喜んでくださいます。


——診療のたびに毎回、文書でいただけるのですか?


斉藤 いえ、毎回ではありません。その患者さんにとってより重要なポイントの時ですね。内科に通う患者さんの多くは、突発的な急患以外、10人中8人ぐらいまでは「変わりないね。いつもの薬を出しておくね」「大丈夫、変わりないね」で済んでしまうことが多いのです。
 でも、例えば糖尿病だったら、血糖値の数値が異常に変化したとか、別の余病を併発しているとか、あるいは見た目の変化とか、重要なポイントがいくつかあります。その時にポイントを見逃さず、状況や診断を十分説明してあげることは、患者さんにとっては何よりの安心につながりますから。


——具体的にどのような項目が1万ページも用意されているんですか?


斉藤 日々の診療から得た情報から「こういったものがあると便利だな」とか「説明するときに具体的な画像を見せてあげたらよりわかりやすいな」など一つひとつ考えて作成してきたものに加え、最新情報などをもとに作成したリーフレットがありますので、あらゆる症例、病気、それに関連する数値や画像がインプットされています。ないものはどんどん作っていきますし(笑)。
 どんなものか、お見せできるとわかりやすいですね。
 例えば、『肺気腫』の疑いがある患者さんに対して、喫煙歴があれば、タバコを吸っていると血管はこうなってしまいますよ、と画面を見せ、血液サラサラという状態はこんな感じ、ここにゴミがあると血液が停滞して固まる、それが血栓の状態。そして肝心の肺気腫は、こういう疾患ですよと、画像を見せていく。わかりやすいでしょう?

 

リーフレット

『肺気腫』のリーフレットシステム


 また、最近はテレビの影響で、いろんなことを心配して来院する患者さんが多い。例えば、手がしびれるから脳梗塞じゃないかと心配される方が結構多いですよ。そういう場合、脳梗塞の初期症状やしびれの意味や関係やら、言葉だけで説明するより、図や画像をその場で見せてあげると納得が早いです。それを持ち帰れば家族にも説明できるし、安心でしょう。
 こうしたことって、結果、あなたは脳梗塞ではありませんという説明をして、患者さんに安心してもらうためにやっていることの方が多いんですね。それだけ重篤な患者さんの方が割合としては少ないのです。だから逆説的に言えば、大丈夫ですよ、安心して下さいということを患者さんに納得してもらうために、これだけ努力している内科医って、珍しいかもしれませんよ(笑)。
 

——患者側から考えますと、説明なしで「大丈夫ですよ」と言われると軽くあしらわれたと感じてしまいがちです。ですから斉藤先生のように、痒いところに手が届くような説明を受けると、いっぺんで名医だと思ってしまいます。


斉藤 そう、それでいいんです(笑)。それで患者さんとの信頼関係の第一歩が築けます。これが内科医にはとても大事なことです。外科医ももちろんそうですが、外科の場合は手術のうまい下手で評判が浸透するスピードが違ってきます。ちょっと話がそれますが、うちの病院長で乳腺外科の渡辺修先生などは、出身が東京女子医大というブランドがあって、さらに手術の腕が抜群にいいので急成長したいい見本でしょう(笑)。
 反対に私のような内科医は、日々の診療で地道に評判を築いて今があるわけです。そのためには、信頼関係を築くことが大前提です。信頼関係があれば普段、何もないときは「大丈夫ですよ」のひと言で1分診療で終わっても、「ああ、先生がそういうなら安心だ」って信じてもらえます。


——具体例でもう少し説明していただけますか?


斉藤 そうですね、例えば、長島茂雄さんの、「心房細動」という症例。これなど「心房細動」という言葉を聞いても、字を思い浮かばない。そういうときに画面で見せてあげれば、一目瞭然なわけです。

 





『心房細動』のリーフレットシステム


 心電図で右脚ブロックという言葉がありますが、ある患者さんに、画面を見せて「右脚ブロックというのは実はこれなんですよ」と、説明したら、「いやあ、これまで10年間、よその病院で右脚ブロックと言われてきましたが、先生に教えてもらって初めて分かりました」と、感激されたことがありました。
 医者にしても、これくらい分かるだろうという思い込みで説明しないってことってあるんです、この時も画像を用意しておいて良かったなと思いましたし、思い込みには気をつけようと反省しました。
 医者として経験を積むには、方法がいくつかあると思います。一つは患者さんから学ぶこと。これが一番大事。次は、ちゃんとした本を読むこと。3つ目は、一番新しい情報や知識を得るために、研究会や学会に行くこと。ただ、それらのバランスが大事で、学会や研究会ばかり大事にしていると、患者さんの症状をよく見ないで、最新の情報や数値に患者をあてはめてしまうとか、大いなる間違いも侵してしまうから、そこは気をつけなくてはならない点です。 
 私の専門の糖尿病の世界でも、新薬がどんどん出て、薬を売ることがメインになり、そうした時期が10年続き、次に反動の10年が来るかなと警戒しています。今、そうした傾向があちこちに起きていて、コレステロールやうつ病などにも反動が来ています。うつ病など、新薬が出過ぎて逆にうつ病が増えてきてしまった。最近、その反動で「うつ病は99%ウソだ」という極論が出たりしてます。
 糖尿病でも、例えば学会に行ってインシュリン分泌を計算する式とかが発表されるとします。臨床経験の浅い医者がよく間違えるのは、この式で計算して患者さんにインシュリンを打つかどうか決めてしまう。でもこういう式って、ある瞬間のインシュリンの分泌を見てるわけで、患者さんの日々の、あるいは数年間の体重と血糖値の変化を見ているわけではないのです。
「臨床現場では、インシュリン注射の適用を計算式で決めてはならない」と、誰も言わない。学会でも権威ある先生方も。患者不在の医療にならないように警告を発したいですね。
 

——三和病院はその点でも安心ですね?


斉藤
 少なくとも、患者さんから学ぶという姿勢は共通して皆が持っています。これは自信を持って言える点です。診療スタイルはそれぞれ違いますが、お互いにお互いを認め合っていればいいし、基本的なところで良心があれば一緒にやっていけると思います。
 さきほどの説明のためのリーフレットシステムでも、なぜ他の病院や医者は、これをやらないのかと思います。どうして患者さんに説明することに、もっと力をいれないのだろうと不思議です。
「こういうふうに患者さんに説明するための用意をこういうようにしようよ」とか「プロジェクトとして取り組もう」とか、そういうことを大学とか教授とかが言い出して組織として始めたら、絶対に勝てないと思いますが、誰もやろうとしない。私の診療ですが、糖尿病の専門医がどこから来ても私のこのリーフレットシステムを見たら、「これは勝てない」と思うと思いますよ(笑)。別に勝ち負けのために作ったわけではありませんが、それくらい、患者さんに対して用意しているものが違うってことを言いたい。
 今、三和病院のこのホームページをご覧になっている方で、病気について、健康に関して、もし何か心配なこと、聞きたいことがありましたら、ぜひご来院下さい。必ず、「来て良かった」「相談して良かった」と思っていただける診療をお約束します。

斉藤丈夫理事長

Dr.TakeoSaito

医学部卒業後、20年以上臨床一筋に歩んできました。
千葉大学医学部旧第二内科(現細胞治療学講座)
糖尿病研究室で学び、
糖尿病診療のエキスパートですが、
幅広く内科疾患全般の診療を行います。
三和病院で提供する患者さんへの説明用リーフレット

の大半は斉藤医師作成です。